儚い

ことだま

 

今年で僕も29になります。皆さんもまたひとつ年を重ねていきます。

 

年が明けて年を越して、その繰り返し。

毎度の如く年末に畳み掛ける大掃除とゴミ袋を埋め尽くす使い古した思い出たち。

必ず食べる年越しうどんは今年を振り返る余韻をすする麺が追い越していく。

忘れてしまった興奮の瞬間を温め直す箱根の駅伝。

テーブルを囲んでいた椅子には面影だけがのっている。

 

同じことを毎年繰り返しているようで、慌ただしく過ぎているようで、そこにはもう2度と来ないかけがえない瞬間と取り戻せない現実が入り混じっている。

 

日に10回ほど鳴り響いていた携帯の通知は、今日は不気味なほど静かにだんまりを決めている。

当たり前の毎日のなかで確かに共に過ごしたあの時間が、歩んできた証が、支えになっていた最後の一本を抜いたジェンガのように崩れ落ちていく。

 

もう止められないのだろうか。

 

なんとも儚い。心に吹いた悲しい風は温かい言葉をかける隙を奪っていく。

仕立てたスーツに袖を通す日が遠い先の未来であることが良いことなのかわからなくなってしまう。

 

マナーモードを解除して自分の今日を生きよう。