今回のテーマは、「書道と書写、習字の違い」についてです。これらの違いって意外と知らない、間違って使っていることが多いように思います。それらについて書道家と元教員の目線で見ていこうと思います。
「字を綺麗に書きたい!」「習い事として始めたい!」という方も、選ぶ際の参考にしていただけたらと思います。
習字とは
習字は、文字通り字を習うこと。手本とする字を真似して練習していくことを指すイメージです。硬筆、ペン字といったことも習字と言えると思います。
私も小学生の時に習字教室に通っていました。そこで習ったことは、筆を使っての点やはねる、とめるなどの基本的な書き方に始まり、お手本をよく見て真似て書くというものです。
後に出てきますが、文字を綺麗に書くためにはどうすれば良いのかを詳しく教えてくれるという印象では無いです。あくまでも真似て書いていく中で書き方を教わると言った感じです。
書写とは
書写は主に学校教育で用いられます。多くの人が初めて書に触れるのが、書写だと思います。では、習字と同じかと言われると少し違います。というのも書写において求められているもの、身につけさせたい力は「学習指導要領」に示されています。
学習指導要領とは簡単にいうと、「教員が授業において何を教えるべきか」について全国統一で定めたものです。
書写においては、姿勢・筆順・点画の接し方などについて学び、文字を正しく書くことを目的としています。学年が上がるにつれて、筆の使い方・紙に対しての文字の大きさ、さらには文字文化に対する意識といったところまで書写を通して学ぶこととされています。
正直なところ、中学校のもなれば年に数回しかない書写の授業で文字文化に対する意識がどこまで持てるかは疑問です。
でも自分たちが当たり前に使っている「文字」について学び、文化についても筆や紙などを通して学べることは良いことだと思います。
書道とは
では書道とは何をもって書道なのか。「書道は芸術だからどんな風に書いても良いのか!?」というとそうではありません。まずは書道の歴史や技術を学ぶことからだと思います。
中国で生まれた漢字と時代に伴って登場する様々な書家たち。当時は字が上手に書けないと高い位の役職に就くことができませんでした。そんな中で文字をより速く、簡略に書くために「書体」(書き方、崩し方)が生まれ、優れた書は多くの人に愛され、時の権力者たちは奪い合うこともありました。
漢字については過去の記事で詳しく解説しています。よければご覧になってください。
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その漢字が日本に伝わり、やがて日本独自の文化として「平仮名」が生まれます。日本の歴史の中でも優れた書は重宝され、現代においても大切に守り継がれています。
これらの書における歴史と共に技術を学び、それらを消化して自分の文字として表現することが「書道」だと思っています。
書道と習字、どちらを学べば良いのか
まず考えたいのは、「自分はどうなりたいのか」です。
自分の字にコンプレックスをもっている人も少なく無いと思います。字を綺麗に書きたいのか、技法を学んで表現したいのかによって方向性は変わってきます。
でも一つ言えることは、学校の書写で習ったことだけでは文字を綺麗に書くことはできないということです。「綺麗な文字」と聞いて思い浮かぶのは、「整った文字」ということでは無いでしょうか。
少し脱線しますが、文字を書く時に大切なことは「バランス」であり、「形」です。文字を部首や偏などに細かく分けてそれぞれの大きさ・上下左右との関係について見ていく必要があります。積み木のブロックを組み立てていくようなイメージです。これを学んで身につけることができれば「バランスの整った文字」を書くことができるようになります。
整った字の書き方を知った上で書道の技法を使うことで、表現の楽しさを味わうことができます。筆の使い方、用具・用材の選び方によって実に様々な表現の方法があり、自分の表現ができるようになります。
私はこれが「書くことの楽しさ」だと思います。
なので私のおススメは書道を学ぶことです。もちろん「この人が書く字が素晴らしいから習字教室に習いにいく」というのも全然ありだと思います!本気で書道について学びたいと思うのなら、大学に行くというのも一つの選択肢です。私が通っていた大学については下の記事を読んでみてください。きっと想像よりハードですよ。
まとめ
習字においても、書道においても「書くことの楽しさ」を感じていただけたら嬉しいです。正しく学んで練習すれば誰でも上達していきます。少なくとも今より自分の字を好きになれると思います。
自分のライフスタイルに合った方法で文字を書くことを学び、身の周りに溢れている文字たちに目を向けて過ごすと日々の生活が少し豊かになっていくと思います。