こんにちは、書道家の戸野大信です。作品を書いて個展をしています。「書道家」のwebサイトはこちらからご覧になってみてください。
書道家 戸野大信
1996年奈良県生まれ 私は「言葉の持つ力」を信じています。ご縁をいただいた方の心に届くものがあれば幸いです。
3月に個展をします❗️
書道家の戸野大信です。ブログのプロフィールに上手くサイトのURLが表示されなくて、諦めましたところであります。わからんものはわからん!前向きにいきましょいう!
さて、先日のブログで今年は11月に個展をしますと言...
さて、今回は私の母校、奈良教育大学の書道科についてです。
ここは全国的にも珍しい4年間書道を専門的に学ぶことができる大学です。いったいどんなことを学ぶのか、卒業生の視点で振り返っていきたいと思います!
About me
プロフィール
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About me
1996年、奈良県生まれ。
奈良教育大学教育学部伝統文化教育専攻書道教育専修 卒業
高校書道の常勤講師を経て、現在は書道家として個展活動...
3月に個展をします❗️
書道家の戸野大信です。ブログのプロフィールに上手くサイトのURLが表示されなくて、諦めましたところであります。わからんものはわからん!前向きにいきましょいう!
さて、先日のブログで今年は11月に個展をしますと言...
奈良教育大学ってこんなところ
まず初めに奈良教育大学は、「教員」を目指す大学です。在学中に必要な単位を取得し、教育実習を経て卒業の際に教員免許を取得することができます。
教員免許といっても種類は様々。
小学校・中学校・高校・幼稚園・特別支援などがあります。
大学受験の際には、自分の学びたい専門分野を選択します。それに伴って2次試験の際には専門的な実技試験が必要な場合があります。あとで登場しますが書道科を受験する際には実技試験が必要です。
そして教員免許状は頑張れば複数取得することも可能です。書道科の場合は国語と共通する授業が多いため、中学校国語もしくは高校国語の免許を合わせて取得する場合が多いです。私の場合は下記の免許を取って卒業しました。
重要なことは「頑張れば」ということ。複数の教員免許を取得する場合にはその分教育実習も追加で行かなければなりません。私は2回実習に行きました。期間にすると合計1ヶ月ほどです。わりかしハードなので、学生の方はばんばりましょう!!
奈良教育大学の公式HP、取得できる免許・資格一覧はこちら↓
取得できる免許状・資格
取得出来る免許状・資格の一覧はこちらを参照してください。Tel:0742-27-9126 Fax:0742-27-9145 E-mail:nyuusi
余談ですが、奈良教育大学は近鉄奈良駅やJR奈良駅が主な最寄駅になります。大学の周辺には東大寺の大仏・奈良公園とたくさんのたくさんの鹿たち・そして駅から大学までの間にならまちが広がっています。駅の周りには商店街とお店があり海外の観光局も大勢歩いており賑やかです。年に数回大きなお祭りも開催されています。
奈良教育大学
奈良教育大学の公式WEBサイト。大学の取組やイベントの紹介、教育学部・教育学研究科・センターなどの案内、入試情報などを掲載しています。
書道科ってどんなところ?
それではここからは、書道科についてみていきましょう!実は全国的にみても、書道を専門的に学びつつ教員免許も取得できるところは少ないです。多くの場合は、文学部に所属して途中から書道の講義が始まると言う流れになります。とりわけ4年間書道を学べるというのはかなり珍しいです。(私が知らないパターンもあるかもしれません。)
書道はざっくり、漢字・仮名・篆刻・書道理論に分けることができ、専門の先生の授業を受けることができます。
余談ですが、書道を学ぶ上で日本の書道会全体を見た時に大まかに西と東に分けることができます。ざっくりと西を帖学派、東を碑学派という感じです。明確な区別があるわけではないですが、奈良教育大学を含む西側は漢字の中でもとりわけ五書体のなかで行書・草書が強いです。
書道を専門的に学びたい方は、検討している大学の先生がどういった雰囲気の字を書くのかを調べてみるといいと思います。大学で教鞭を取られている方なので名前を検索すると過去の作品を見ることができるはずです。参考までに。
話を戻します。奈良教育大学では1回生からバリバリ書道を学んでいきます!!!
具体的には入学してから、講義や課題、展覧会をこなしていきます。展覧会は年3回、課題は本1冊を臨書、展覧会に向けた批評会(自分の作品を学年内または上回生も居る中で先生にしっかりダメ出しをされるメンタルに響くイベントです。ハートが強くなります。)が毎週のように入ってくる。
そりゃ鍛えられるし、上手くなります!!仲間と共に乗り越えてください。
授業ってどんな感じ!?
大学の講義は高校と違う面白さがあります。(講義によりますが。笑)
それぞれの先生の個性があって、資料が物凄い量の人や楽しそうに講義をする人など十人十色です。
漢字
書道には、楷書・行書・草書・篆書・隷書という書体があります。
漢字と一言でいっても書道にはたくさんの書き方、書法(しょほう)があります。書法とは現代においてまた当時の中国においても書の名手とされてきた人の書き方のことをいいます。授業の中では書体ごとに様々な書法を解説を受けながら臨書していきます。
その書法の中でも現代でも名筆と呼ばれるものを中心に臨書していきます。
例えば、欧陽詢という人が書いた「九成宮醴泉銘」は必ず学びます。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AC%A7%E9%99%BD%E8%A9%A2
楷法の極則と称されるこの書は美しさに比例して書くのも難しいです。ちなみに、九成宮禮泉銘は最初から最後までまで本丸々一冊書くことが講義の課題ですっ!!!
膨大な量の半紙と時間がかかりますが、頑張りましょう!
そのほかにも様々な書体と書法を4年間で学んでいきます。
仮名
中国から伝わった漢字を元に発展したのが日本の仮名文字です。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AB%98%E9%87%8E%E5%88%87
現在私たちが使っているひらがなの元となるものです。当時は文字と文字とを繋げて流れるように書いていました。これを連綿と言います。
日本の歴史のなかで個性豊かな書き手が存在し、仮名といってもいろいろな味わいがあります。
先ほどの漢字同様に仮名の名筆を解説を受けながら学んでいきます。
篆刻
書道は書くだけではなく、印をつくる篆刻(てんこく)があります。
中国では、字を書き、墨で絵を描き、印を自分で作っていました。それに加えて楽器を嗜むことも才能のひとつとされ、これらは官僚になるための試験にもなっていました。実に多彩ですね!
篆刻は中国で採れた石「青田石」に、下地を書き専用の彫刻刀で彫っていきます。
完成したものを押印するとこんな感じ!
この印は展覧会用なので非常大きいサイズです。
奈良教育大学には学生が主体となって篆刻を学ぶ、青泥会(せいでいかい)があります。運営はもちろん学生のみ。講師の先生を招いて合宿を開いたり、会長にいたっては全員の作品の下書きを持って他校の先生を訪ねることもあります。私も会長をしていましたが、めちゃくちゃ大変でした。その代わり篆刻の技術は上がりました。
書道理論
書道理論では、中国書道史・日本書道史を学んでいきます。
有名な作品だけでなく、人物や時代背景にも焦点を当てた授業でした。教科書に載っていないようなコアな内容にも触れることができます。
余談ですが、私が学生時代の先生はとにかく所有している作品が多かった!!!
毎時間講義の内容に合わせた様々な作品、拓本、関連する品を見ながら解説してくれました。とてもいい経験になりました。
あんなにたくさんのものを間近でみて触れる経験は大変貴重だったと思います。
(ちなみにテストはものすごく難しかったです。笑)
講義の他にもやる事はまだまだある!
ここまででもなかなかのボリュームですが、講義以外にやらなければならない事は膨大です。
それが展覧会です。1年間に3つの展覧会をこなさないといけません!
ただ書くだけではないのです!!!
展覧会に出品するのは、漢字・仮名・篆刻の3点を最低でも準備しなければなりません。
しかも学年が上がると、臨書作品ではなく創作作品になっていきます!
創作とは・・・自分の好きな書法を研究して作品を作ること。
漢字作品を例にすると、次のような手順で作品を制作していきます。
集字とは、字書から様々な書き方を探し集めること。
このように作品にする漢詩の字を1文字ずつ集めていきます。漢字の作品は大体40文字くらいなので途方もない時間と労力がかかります。(書くまでに。)
それに加えて奈良教育大学では作品の、裏打ち・表具を基本的に自分たちで行います。スケジュールを組んでこれらの作業をこなしていきます!夏休みが消えていく〜
展覧会の種類は以下の通り。
回生展
回生展は大学内のホールで行う同会生のみで開催する展覧会です。
会場の設営はもちろん表具や紙の手配、看板制作に至るまで全て自分たちでやっていきます。
教育大展
在学生1〜4回生が展覧会を開催します。会場は会館のフロアを借りて行います。OB、OGの方々も出品する一大イベントになっています。
作品制作、裏打ち、表具はもちろんのこと、会場の予約・搬入に使用するレンタカーの手配などやる事は山のようにあります。私はレンタカー係だったので、車を手配して大学から会場までの間を作品を乗せて何度も往復していました。そう、車の免許を持っている人はこうなります。
3回生が主体となって展覧会を進めていきます!
高大展
全国の高校生・大学生が出品する展覧会です。
出品するのは基本的に、漢字・仮名・篆刻の3点。人によっては調和体(漢字仮名混じり)も出品する場合もあります。
大変です。締め切りの前はもうドタバタです。(人によりますが。笑)
私の4回生のときの漢字と篆刻作品はこんな感じでした。
卒業論文・作品
書道科は卒業要件として、以下の2つが必要です。
4年間書道を学ぶなかで自分のメインとなる書風を決め、作品制作をし、自分の探求したいテーマで論文を書きます。
私は、傅山という人物を選びました。傅山とはこんな人です。
(Wikipediaより引用)
高校生の時、初めて傅山の作品に出会いました。そこから一目惚れです!こんなにグルグルと文字を連綿させているのに美しいということに感動して好きななりました。よくよく調べていると性格も似通ったところがありました。笑
卒展の作品は、漢字・仮名・自由作品の3展。
私は漢字も仮名も屏風にしました!
漢字は縦2メートル、横3,6メートルの巨大屏風。
仮名は展示のために壁掛けに。
こんな感じに配置をしながらやっていました。仮名は準備がギリギリでした。笑
3作品目は祖母に書いたものです。
吉田松陰の「至誠」を草書で書きました。
卒展は4年間の集大成。締め切りに向けて、とにかく書きました。ただガムシャラにするのではなく、自分のスタイルを探しながら少しずつ自分の書が出来上がっていきました。
仲間たちと大学に泊まり込みで作品を書くこともありました。いや、後半は相当な頻度で泊まりで書いていました。いい思い出です!
ここで必ず直面する問題について。卒展の作品を書くにあたって、端的にお金がかかります。
私の場合漢字の屏風だったので、紙が50枚10000円〜15000円。紙を2枚つなげて二段にするので一回の練習で1200円くらいかかりますね。笑
ここから更に「表具代」がかかってきます。作品のサイズ・展示方法・表具の豪華さによって大きく変わってきます。
在学中に計画的に準備をしておきましょう!
大学入試について
前述の通り、この大学では受験に際して書道実技が必要です。
私が受験した時は以下のような内容でした。
-
漢字(楷書) 臨書
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漢字(行書) 臨書
-
仮名 臨書
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創作
これらの課題を制限時間内に配布された紙の中で書き上げなくてはなりません。(正直、何度も書き直していると時間足りないですよ!)実技試験の練習をするときは時間を意識して取り組みましょう。
入試に向けては高校の書道の先生や書道教室の恩師の元で猛特訓しました!
半紙に換算するとざっと少なくとも1000枚は書きました!!
ただガムシャラに書くだけではダメです。高校書道の教科書に出てくる作品の特徴・技法をしっかりと捉えて書く練習が必要です。
大学入学後に役に立つので、頑張りましょう!(入学してからの方が遥かに大変です。)
※あくまでも私が受験した際のことですので、受験要項をしっかりと確認してください。試験内容は参考程度にお考えください。
大学生活を通して得たこと
私が大学での4年間で得た事は、「自分の字を書くことの楽しさ」です
書を学ぶにあたり、大学では過去の書家・能書家の書をベースに学んでいきます。書く技術を養う上でそれらを学ぶ事はとても大切です。筆の使い方や選び方、腕の動かし方、線の質は簡単に身につくものではありません。現代に至るまで多く人に愛され、大切にされてきた書にはそれらの技術が詰まっています。
一方で、目指すゴールがいかにその書家の字に似ているかになってしまうと少し残念に思います。自分の書きたい字、自分に合った書き方のスタイルを見出せるように切磋琢磨してみてください。その結果、「やっぱり書道って楽しい」と感じることができる学生生活であれば幸せですね。
もちろんそれぞれに目指すところや学びたい事は違うので一概には言えませんが。
このブログを読んでくださった受験生さんや学生さんが素敵な学生生活を送れることを祈っています。面白がって、楽しんでください。
「遊」〜知って面白い漢字の成り立ち講座〜
個展情報↓
〜漢字の成り立ち〜
漢字のルーツは紀元前1300年頃。占いの結果を亀の甲羅や獣の骨に刻んだ事が始まりだと言われています。時代の変遷、権力者による文字の統一、膨大な年月を経て様々に形を変え、今私たちが目にしている漢...